心淋し川(うらさびしがわ)
更新日
2021年8月1日 15:00:00

発行日
2020年9月10日
作品概要
西條奈加(受賞時56歳)の連作短編小説であり、第164回(2020冬)直木賞を受賞した。
ポイント
・6編からなる短編の時代小説だが、それぞれの短編には関連性があり、一続きの長編小説 とみなすこともできる構成(連作短編小説)。
・時代小説のため、生活様式などの点で、現在人には馴染みのない表現があるが、電子書籍なら検索しながらであれば比較的容易に読破できる。
・話の展開はテンポが良く、共感しやすい内容。
・舞台は江戸千駄木町にある貧民街の心町(うらまち)
・短編ではあるが、心町を中心に6つの場面が描かれ、その最後の章で、各章の登場人物の何人かが再度登場し、その心町を管理する茂十を中心に描かれている。
・2020.9.4発売。
・kindle 1584円 単行本 1760円 2021.3.28現在
・作者西條奈加は1964年、北海道中川郡池田町に生まれ。2005年、『金春屋ゴメス』が第17回日本ファンタジーノベル大賞大賞。2012年、『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞受賞。2015年、『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞受賞。2021年、本作で第164回直木三十五賞を受賞。
・主に時代小説を得意とする。初期はファンタジー要素のある時代小説であったが後に一般の時代小説に移行する。
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あらすじ
全章で心町の差配(町を管理する人)茂十が登場する。
第1章 心淋し川
ちほという名の少女がこの章の主人公。裁縫師の見習いで上絵師(着物の紋を描く上絵師)の元吉との恋愛話。
第二章 閨仏(ねやぼとけ)
大隅屋六兵衛の4人の妾のうち、最古参のりきという名の容姿に恵まれない女性が主人公。ある日ひょんなことから、とある遊具で木彫りの仏像を彫り、それが評判となって話が展開していく。
第三章 はじめましょ
心町で四文屋という小料理屋の店主、与吾蔵と謎の少女ゆかとの出会いから与吾蔵がかつて捨てた女るいとの関係が明らかになっていく話。
第四章 冬虫夏草
もとは高鶴屋という薬屋のおかみであった吉と体が不自由になった息子富士之助との話。息子富士之助も問題はあるが吉も現在でいう毒親に類する。
第五章 明けぬ里
根津の冴えない遊女上がりのようという人妻が偶然、町中で根津でナンバーワンの遊女だった明里と出会うことから話が展開される。両者とも今は身請け(妻や妾などとして買われて遊女を引退すること)され身籠であった・・・。
第六章 灰の男
心町の差配茂十と茂十が世話をする呆け老人楡爺との関係。茂十の過去と心町に来た経緯が描かれている。